-
1. 小さな家
緩やかな坂道を登れば、手作りで紡いだ、小さな暮らしの場所があります。
毎日外で起こる色んなことも、全部優しく包み込んでくれる、私の居場所。
「一緒に、お家へ帰ろう」というメッセージを、どこかノスタルジーなメロディーの乗せて、過去と現在を行ったり来たりしながら、お話するように歌いました。
-
2. ミッドナイトワルツ
祖母の家では、真夜中寝静まったはずの部屋から「気をつけてね、戻っておいでね」という声が聞こえます。
そうです。祖母の家に住んでいる猫は、どんな時間でもお家の中と外を、自由に出たり入ったり、自由気まま。まるで毎晩飲み歩く困った旦那様を送り出すようなその姿に、ほっこりしてしまい、新しい家族の歌ができました。
心配で待つ私をよそに、列車の影でダンスをする、秘密のワルツ。
-
3. ローレンス
恋をした喜びは、時が経ってフィルムが色褪せても、ついさっきのように鮮やかに蘇ります。映画の中の、美しい回想シーンを描くようなイメージで作ってゆきました。
5月の風に乗せて、いつも傍にいるあなたに、何度も何度も愛を呼びかけているような喜びの曲です。「ローレンス」という名前は、古い映画の中から、いただきました。公園の噴水のような、弦楽の美しいハーモニーもとても好きです。
-
4. よっこらせい
何にもしない、どこにもいかない、そんな歌があってもいいな、と思って取り掛かったのがこの曲です。
時には日々の流れを薄目で眺め、好きな音楽に体を預け、ただ時をゆっくりと過ぎてゆくのも、いいですよね。難しい方は、曲の中で一緒にゆきましょう。
何度も繰り返し聴いたお気に入りのレコードの中から流れるような、そんな音を目指して作ってゆきました。
-
5. Palette
夕陽が空に描くのは、淡い青春の日々。
まるで誰かが書いたストーリーのように、今では遠く遠く感じる日々の数々。
ふと見上げた空があまりに美しかったので、ほんの少し感傷に浸りながら、あの日の私に手を振ります。
チェロの中低音を中心とした弦楽の大きな波は、空に浮かぶ雲のクジラが優雅に泳いでいるようです。
-
6. Gattan Gotton
電車の窓に寄りかかって、自分で歩くのではなく電車に運ばれながら、疲れた心をどこかの街へ手放しにゆきます。
どんどん景色が変わってゆくことで、少しずつ涙からも離れ、知らない間に大丈夫なるのが、旅の不思議です。
最後の歌詞で迷っていた時に、レコーディングスタジオでチェロの吉良ちゃんが「お腹が空いた〜」と言っていたので、「涙のあとは お腹が空くわ」になりました。吉良ちゃん、ありがとう。(笑)
-
「一度、ピアノから離れて作ってみましょう」羊毛さんのその一言から始まったこの作品作り。とても驚きましたが、同時にこれからどんな旅が始まるのか、すごくワクワクした事を思い出します。
いつもピアノと共にフワフワ空や海へと浮かんでゆく思考を地上に下ろし、これまで描ききれていなかった日常の中にある表情や景色から目を逸らさず、一曲ずつ音楽にしてゆきました。
途中何度も夢へと逃避しそうになっては羊毛さんと話し合い(ダメ出しをいただき・・・笑)、しっかりと引っ張っていただいたり、時には納得がいくまで待っていただきながら、最後には凝り固まった自分自身がほぐれてゆくような、確かな人肌の音楽が出来たと嬉しく思っています!
ピアノを離し、ガットギターや弦を中心とした豊かな音色で歌わせていただくことで、歌唱の新たな表現や可能性にも、沢山気がつくことが出来ました。羊毛さんはじめ、参加ミュージシャンの皆さまには、もう足を向けて寝られません。
穏やかなタッチで挑戦をしました今作、どうぞ皆さまの暮らしに、そっと寄り添うことが出来ますように。
タイナカ彩智
-
一枚まるごと作詞作曲から関わらせていただいたんですが、自分の作品について考える事とはまた違う脳みそ使う感じでこの『キャッツクレイドル』の製作はとても勉強になりました。
せっかくプロデュースするなら自分の得意分野に特化させていただこうと、ギター中心でウッドベースとストリングスを足すような完全アコースティックなサウンドで、今までと違いピアノは極力入れない方向に舵を切らせていただき、ソングライティング面でも歌唱面でも新しい一面を見せてくれたおかげで、僕にとってもその目論見は間違ってなかったと思えるような作品になりました。
しかしタイナカさんは打ち上げ詐欺の常習犯として有名で、過去のライブの時もCD完成の時も「打ち上げしようね」と言ってはくれるものの未だに一度も実現した事はありません。
今後プロデュースされる方も気をつけて下さい。打ち上げはたぶんありません。
市川和則